帰宅客で混み合うニューヨーク市地下鉄の列車内で、乗客同士の口論が発砲に発展する事件があった。
事件が起きたのは14日午後4時45分ごろ、ダウンタウン・ブルックリンを北方面に走行するAトレイン。
ニューヨーク市警察の発表によると、32歳の男性がノストランドアベニュー駅で乗車した後、列車内にいた36歳の男が近づき「攻撃的かつ挑発的な」態度を取ったことで、喧嘩となった。
36歳の男から銃を向けられた32歳の男性は、銃を奪って男に向けて発砲。36歳の男は頭部を撃たれ、病院に搬送された。重体と報じられている。32歳の男性はその場で拘束された。
事件は捜査中だが、ブルックリン地区検事長は15日、男性には「正当防衛の証拠」があるとして、起訴しない方針を明らかにした。
乗り合わせた乗客が携帯電話で撮影した動画には、口論から発砲に至るまでの緊迫した様子が映っていた。
映像は、36歳の男が座席にいた男性に対し「お前を殴るぞ!」と何度も怒鳴りつける場面から始まる。32歳の男性が反発し、2人はファイティングポーズを取り始めた。この時点で、周囲にいた乗客は、トラブルに巻き込まれるのを避けようと2人から離れた。
2人が殴り合いの喧嘩に発展する間、女性の乗客が刃物のようなもので36歳の男の背中を複数回刺した。36歳の男は男性に馬乗りになった状態で、自分の背中を押さえ「お前は俺を刺したな」と女性に向かって怒鳴りつけた。男が着用していたシャツからは、血が滲み始めた。
黄色いベストを着た別の乗客が間に入り、2人を引き離したが、36歳の男の怒りは収まらず、ジャケットから銃を取り出し、32歳の男性と刃物で刺した女性に向かって行った。
男が銃を持っていることに気づいた乗客は、一斉に車両の反対側に向かい、身を伏せる様子が撮影されている。電車が「ホイト – シェルマーホルン」駅に到着すると、撮影主は「私を出して」と繰り返し叫んだ。周囲からも「ドアを開けて」と焦る声が聞こえる。扉が開き、乗客が一斉に車外へ飛び出す瞬間、4発の銃声が鳴り響き、人々が叫び声を上げた。
映像は、駅構内の階段を駆け上がり「NYPD」とシートがかけられた柵の中に飛び込む場面で終わる。
動画を撮影したポールさんは、WABCニュースの取材に「人生で体験したくないことの一つだった。飛び逃げたら皆もついてきて、私の上にのしかかった」とその時の状況を振り返った。また、地下鉄を利用するのはもう安全ではない。ニューヨークにいたくないと語っている。
州兵を派遣
ニューヨーク地下鉄の今年の犯罪件数は、昨年同時期に比べ13%増加している。銃器の所持で逮捕されたのは17人だった。昨年の逮捕者は、1年間で8件だった。
ニューヨークでは先週、地下鉄の利用客の安全を確保するため、主要な駅で750人の州兵の配備をスタートしたばかりだった。州兵とニューヨーク市警察の警官と共に、危険物を持ち込んでいないかランダムな持ち物チェックを行い警備を強化していた。