アフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)は27日に発表した評価報告書で、アフガン治安部隊(ANDSF)の急速な崩壊の要因は、同国の真の治安部門の再建に関わる米国の「政治的意思」の欠落を背景とした、独立運用不可能な部隊の創設と非現実的な軍事能力の開発計画などにあったと評価を示し、予測可能だったとした。
報告書では、米軍への過度な依存を作り出した例として、撤退の願望を抱いていた米軍が、ANDSFに訓練させるはずの補給や後方支援、退避、諜報、メンテナンス、調達といった活動を代わりに行い、見せかけの成功をつくろうと努めたこともあったと明らかにした。
SIGARは、アフガニスタン復興プロジェクトを独立した立場で監査する機能として、議会によって設置された機関で、今回の評価の目的は、ANDSFの崩壊の要因を特定することなどにあるとしている。
2021年の20年に及んだ駐留米軍の撤退は軍事力の空白をもたらし、ANDSFの士気低下とガニ政権の崩壊、タリバンの政権掌握を許した。
バイデン大統領は当時、米軍は30万人近くのANDSFの現職の軍人を訓練し、過去20年間に訓練を受けた隊員は、数十万人に上ると説明。近代的な軍隊のあらゆる手段、先進的な兵器を提供してきたと強調していた。
報告書では、治安部隊の崩壊はトランプ氏とバイデン大統領の撤退の決断によって加速されたとする一方、20年間、900億ドルの国際支援にもかかわらず、米国とアフガニスタンの両政府は、独立・自立した部隊を構築することに失敗したと指摘した。
米軍が置き去りにした兵器にも言及。取り残された兵器や装備は72億ドル(約9,800億円)に上るとし、これには航空機78機、空対地弾薬9524発、車両4万台、その他の兵器30万個が含まれ、すべての暗視、監視、通信、生体認証装置も置き去りにされたとした。
崩壊を招いた直接的な要因としては、2020年のトランプ政権とタリバンの撤退合意後に空爆を制限した点を挙げたほか、米国が、ANDSFを米軍の「鏡」として設計し、高度な軍事的専門知識と指導力を必要としたことから依存関係から抜け出せなくなったと指摘した。アフガン空軍が自立運用できるようになるには、少なくとも2030年以降と予測されていた点にも言及した。
一方、体系的な要因について、韓国に数十年を費やした経験にも関わらず、米国は、自立した治安部門の構築にかかる時間の現実的な理解に欠け、政治主導で目標が頻繁に変化することで、自立した部隊を構築するための現実的な目標を設定する能力が損なわれていたと説明。
さらに、NATO主導の連合軍や国際治安支援部隊をはじめとした一時的な組織が育成に関わったが、これらの組織では人事の入れ替えが頻繁であり、継続性と組織内の蓄積が損なわれていたとしたほか、米国防総省はANDSFの発展を測定する指標を繰り返し変更し、長期的な進捗の追跡が不可能だった点も要因だとした。
結論としては、米国のアプローチには「戦乱で疲弊した国の治安部門全体を再建するために必要な時間と資源を注ぐ政治的意志が欠けていた」とした上で、「独立運用ができないANDSFを創設し、軍事能力開発に関わる非現実的なマイルストーンを設定した」と評価を示し、「最終的に崩壊することは予測できた」とした。
米国の体制面では「他国の軍隊を大規模に育成するための組織、組織間の基本原則、政策、専用資源がない」ことも重要な問題だったと指摘した。
一方、アフガン政府の問題としては汚職が蔓延し、政府高官がしばしば、個人的な利益を優先したと説明。軍部では政治的配慮に基づいた人事や、米国から支給される給与を目当てに隊員が入隊するなどの課題があったとした。