第91回アカデミー賞授賞式では、スパイク・リー(Spike Lee)監督が脚色賞を受賞し、長いキャリアで初めてのオスカーを獲得した。脚色賞をアフリカ系アメリカ人が受賞するのは史上初めてとなる。
受賞スピーチでリー監督は、2020年大統領選を「愛とヘイトの道徳の選択」と呼び、「正しいことをしよう」と投票を呼びかけた。
亡きプリンスへのオマージュだというパープル色のスーツに身を包んだリー監督は、登壇後、スピーチで、黒人奴隷の歴史に言及。授賞式開催の日が、1619年にバージニアに初めて黒人が強制移住させられてからちょうど400年目の黒人歴史月間にあたる今日を「皮肉」だと述べた。社会保障給付を貯蓄し、自身を大学に行かせてくれた祖母に感謝を語りつつ、「この国を作り上げた我々の祖先に賛辞を捧げる。」と述べた。
その後、2020年大統領選は「もうすぐそこ」だと述べ、「みんなで力を合わせよう」と語りかけた。「正しいことをしよう」(do the right thing)」と1989年の自身の映画タイトル『ドゥ・ザ・ライト・シング』とかけて締めくくった。
トランプ大統領はスピーチを非難
会場は祝福の大きな歓声に包まれたが、合衆国大統領だけは、素直に祝福できなかったようだ。
トランプ大統領は、日課となっている朝のツイートで、リー監督のスピーチを「大統領に対する人種差別主義の攻撃」と批判。リー監督のスピーチに大統領の名前は一度も登場しなかったものの、トランプ大統領は個人攻撃と受け取った。さらに自身を「刑事司法制度改革、歴史的低水準の失業率、減税」を例に挙げ、他の大統領よりもアフリカ系アメリカ人のために仕事をしている、と付け加えた。
『ブラック・クランズマン』とは
リー監督に初のオスカーをもたらした作品『ブラック・クランズマン』(BlacKkKlansman)は、1979年の実話に基づいた物語で、デンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デイヴィッド・ワシントン(John David Washington)演じる黒人警官のジョン・ストールワース(Ron Stallworth)と、アダム・サンドラー (Adam Driver) 演じるユダヤ人の刑事が共に、極右派の白人至上主義団体Ku Klux Klan(クークラックスクラン)の集団に潜入捜査を試みるストーリーとなっている。
映画のエンディングでは、2017年のシャーロッツビル事件のフッテージが流れる。同事件で、バート・エドワード・リー将軍(Robert E. Lee)の像の移設に抗議する白人至上主義者とそれに反対する集団が衝突。反対派の集団に右派の人物の自動車が突っ込み、一名が死亡した。事件後、トランプ大統領が「どちらの側にも良い人はいる」と述べるなど、白人至上主義の容認ととられる発言をしたことから、全国的に抗議運動が行われた。
リー監督はカンヌ映画祭で同映画を上映した際、大統領は「憎しみではなく、我々が愛を大切にすることを述べる機会があった」にも関わらず「KKK、オルトライト、ナチのやろうを非難しなかった」と述べ、アメリカだけでなく世界にとって「決定的瞬間」だったと対応を強く非難した。