スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督は、4月に開催される映画芸術科学アカデミーの年次理事会で、ネットフリックス(Netflix)などが製作したストリーミング配信映画は、劇場公開がない限り、アカデミー賞から除外するなど、新たな規制を提案する意向だとIndiewireが報じた。
公開期間に関しては長期を指しており、『ローマ/ROMA』のように劇場を限定し、短期間のみ公開された作品も除外対象に含むとみられている。
スピルバーグ監督の製作会社アンブリン・エンターテインメント(Amblin Entertainment)の担当者は、監督が「ストリーミング配信と劇場公開作品の状況の違いに関して、強い関心を抱いています。」と述べている。
LAタイムズによると、スピルバーグ監督は「良い作品ならエミー賞に値するが、オスカーではない。」とITV Newsに語っている。
先月開催された映画音響協会賞(Audio Society Awards)では、映画館は永遠に存続するべきだと主張している。ストリーミング配信の状況について、ストーリーや技術は進化しており「特に音響は今まで以上に優れている」と述べた。しかし「大きな暗い劇場に足を運び、出会ったことのない人とともに、映画に浸る体験には代え難い。」と劇場の重要性について触れた。
この報道に対し、エイヴァ・デュヴァーネイ (Ava DuVernay)監督は、支部会員は理事会に参加できないと述べ、「私のように違った意見を持つ人からの声明を読み上げる監督がいることを望む。」と異を唱えた。
デュヴァーネイ監督は、ネットフリックス製作のドキュメンタリー『13th -憲法修正第13条-』(13th)が、昨年オスカーにノミネートされている。
今年オスカーノミネートのネット配信作品は?
第91回アカデミー賞にノミネートされたストリーミング配信映画は、アルフォンソ・キュアロン監督の『ローマ/ROMA』の他、コーエン兄弟の『バスターのバラード』(The Ballad of Buster Scruggs)があり、これらは短期間劇場で限定公開された。アマゾンの『あの歌、2つの心』(Cold War)は3部門でノミネートされた。
1970年代のメキシコを舞台に、家政婦と家族の絆を描いたキュアロン監督の半自叙伝的な作品は、高い評価を受け10部門でノミネート。作品賞の最有力候補とみなされていたが、監督賞のほか外国語映画賞、撮影賞の3部門を受賞した。
多くのスタジオは『ローマ』のノミネートに強い不満を抱いていただという。Indiewireは、苦情の例として、アカデミー賞用のプロモーション費用が桁違いに大きいことを挙げている。『ローマ』は5000万ドル(56億円)に対し『グリーンブック』は500万ドル(5.6億円、NYタイムズによると2500万ドル)の予算を投じた。
他には、興行収入を公表していないこと、公開劇場数と期間(3週間のみ)が限定されていること、ストリーミング配信のため190カ国で24時間年中鑑賞できるなどの例が上がっている。
『ローマ』は、カンヌ国際映画祭で、フランス国内での劇場公開がないことを理由に、コンペティション部門のノミネートから除外された。
一方、ベネチア国際映画祭では、最高賞の金獅子賞を受賞した。
注目のスコセッシ監督作品は?
ネットフリックスは、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが主演を務める『アイリッシュマン』(The Irishman)の配信が控えている。
アマゾンやフールーフールー(Hulu)、ディズニーのほかに、今後AT&T、アップルなどもストリーミング動画配信で賞レースに参画する可能性もあるため、新ルールの制定に注目が集まる。