ニューヨーク市の地下鉄で、ホームレスの男性が乗客から首絞めをされ、死亡する事件があった。
ニューヨークタイムズが警察の話を元に伝えたところによると、1日午後2時30分頃に通報を受けBroadway-Lafayette駅に駆けつけた警官は、北に向かうF番線の車内で、30歳の男性が意識不明となって倒れているのを発見した。男性は搬送先の病院で死亡が確認された。
目撃者によると、男性は周囲の乗客に「敵対的で奇矯な行動」を取っていたといい、車内に居合わせた24歳の男性によって抑え込まれた。
警察は殺人と断定しておらず、24歳の男性は事情聴取を受けた後、釈放されている。今後、市検視局が死因の特定をする。警察は捜査を継続中としており、現在、この男性の意図を特定するために、目撃者から聞き取りを行なっているという。男性は、海軍の退役軍人だとも伝えられている。
ニューヨークポスト紙は、他の乗客が撮影した映像を公開しており、それには車両の床でチョークホールドをかけられた男性が、動かなくなる様子が撮影されている。別の乗客が男性の手を抑えたり、健康状態を確かめるよう促したりする姿も映っている。
撮影主によると、死亡した男性は車内で、食べ物がなく刑務所に行っても構わないなどと叫び、来ていたジャケットを床に叩きつけた。この時、24歳男性が背後から近づき、チョークホールドをかけて地面に倒し、15分ほど絞め続けたという。
なお、命を失った男性は路上生活者で、精神上の問題を抱えた経歴があった。警察によると、暴行や治安紊乱行為などの罪で、複数の逮捕歴があったという。
撮影主はポスト紙の取材に、男性は車両に乗り込むなり叫び、周囲の乗客に怒鳴りつけ始めたと話す一方で、身体的な攻撃を加えておらず、複雑な心境だと語ったという。
市はホームレス対策を強化
ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は昨年、重度の精神疾患を抱えながら街頭や地下鉄で生活を送るホームレスの状況は「危機的」だとして、救急隊員らが、本人に危険を示す「明白な行為」がなくても、強制的に病院に搬送することを可能とする指令を発した。
この動きに、ニューヨーク自由人権協会は「連邦憲法と州憲法は、政府が精神疾患を患う人々を拘束する能力に厳格な制限を課しており、市長が提案する拡大案は制限に抵触する可能性がある」と反発。「住宅、サービス、支援に関する長期的な計画を立てることなく、市政権は、手錠と強制を選択した」と非難した。