米連邦最高裁判所は27日、2020年の国勢調査に市民権の有無に関する質問を追加することに関し、当面は追加を認めないと判断を下した。
最高裁の判断は、保守派のジョン・ロバーツ主席判事が反対に回ったことで驚きをもって迎えられた。ロバーツ判事のほか、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事、ソニア・ソトマイヨール判事、エレナ・ケイガン判事、スティーブン・ブライアー判事が反対意見に回った。
ロバーツ判事は意見書で、投票権法の適切な執行を目的に、司法省が市民権データに関する改善を要求したという説明は「質問復活の決定を十分に説明することはできない」と、商務省の決定の論拠が不十分であると理由を述べた。
ロバーツ判事は、商務省からの接触があるまで、司法省は国勢調査に関心を示しておらず、証拠は「司法省の関心は、データよりも司法省を支援することに向けられていることを示唆している」と指摘。「総合すると、証拠は、長官の決定に関する説明と一致しない内容を物語っている」と述べた。
さらに判事は「長官の話によると、商務省は単に他の期間の日常的なデータの要求に応じて活動したこととなっている。しかし、「我々の前にある資料は、商務省が司法省から要求を得るために多大な労力を割いたことを示している」とし、投票権法の執行のためとする質問追加の論拠を「企てられた」ものと語った。
国勢調査の結果は、議席数や選挙人団の割り当てだけでなく、連邦政府予算の配分にも使用されるため、市民権の有無にかかわらず、米国に住む全ての人を調査対象とすることを義務付けている。
ロス長官は、市民権の質問は市民権法の適切な執行のために必要であると主張し、昨年3月に市民権の有無を加えることを発表した。これに対し、NY含む17州が昨年4月に政府を提訴していた。
ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン前司法長官は、この質問は移民が多く住む州の回答者の抑制を促すとし、今回の決定は、国に住む全ての人々の数を公平かつ正確に集計するという「憲法上の要件」を満たしておらず、連邦行政法に違反すると述べた。移民を歓迎する米国の伝統を重んじるニューヨークのような州への罰則だとし、議会の代表と選挙人団の決定に関わる憲法と、国家の理想を軽んじていると非難した。
最高裁の決定を受け、G20出席のために日本を訪問中のトランプ大統領は「政府が市民権の基本的な質問をできないのはばかげている」とツイート。さらに、「弁護士に国勢調査を遅らせることができるか相談をしている。」と述べ、調査を延期する意向を示した。
商務省は当初、印刷のために6月30日までに資料を確定する必要があるとしていたが、外部団体は、締め切りは10月30日まで延期することができると述べているという。