20日、トランプ前大統領の伝記映画「ジ・アプレンティス」がカンヌ国際映画祭でプレミア上映された。監督のアリ・アッバシ氏は会場で、ファシズムの時代が再来しつつあると警鐘を鳴らした。
トランプ氏が司会を務めたリアリティ番組にちなんで名付けられた同作品は、「不動産王」として名を馳せるまでの若きトランプ氏が描かれているという。「キャプテン・アメリカ」シリーズのセバスチャン・スタンが主役を務めた。トランプ氏の元弁護士ロイ・コン役はドラマ「メディア王」のジェレミー・ストロング、妻イヴァナ氏を「続・ボラット」のマリア・バカローヴァが演じた。
上映後、スタンディング・オベーションが約8分間続いたと報じられている。
VarietyがSNSに投稿した動画によると、イラン出身のアッバシ氏は観客に対し「イランの大統領が死亡した。イスラエルの首相が国際法廷で起訴された。ウクライナでは戦争が起き、スーダンでも戦争が起きている。あらゆる出来事が起こり続けている」と語りかけた。続けて「混迷の時代においては、人々は内省し、現実から目を背け、最善を望み、嵐が去るのを願いがちだ。しかし、嵐は去ることはない」と主張。「実際に嵐はやってくる。最悪の時代が訪れる」と警告した。
アッバシ氏は今回の作風について「ファシズムの高まりに対処することができる遠回しで比喩的な方法などない。自分の思うまま、自分のレベルで、ドロドロとした、ありふれた方法こそが、唯一これに対処できるやり方だ」と説明。制作にあたり、「なぜトランプの映画を作りたいのか?世界について何かを伝えたいなら、遠回しの形や、比喩的な方法で伝えるべきだ」と助言を受けていたとも明かした。
「それは、優れたものにはならないだろう。しかし、世界における問題は、善い人々があまりにも長い間、沈黙し続けていることだ。だから私は、作品を再び、現実問題に関連したものにすべき時だと考えている。映画を再び政治的にする時だ」と訴えかけた。
ハリウッドレポーターによると、作品はプレミア上映前の数日前に完成した。20日時点で、米国での配給会社は決定していないという。