米上院司法委員会の公聴会で、共和党の議員が、テック企業のCEOを「中国共産党に関わったことはあるか」など執拗に問い詰めたことが物議を醸している。
31日の公聴会では、オンラインの児童の性的搾取問題を巡り、メタやTikTok、X、スナップ、ディスコードのSNS企業のトップが証言を行った。
トム・コットン上院議員(アーカンソー・共和党)は、TikTokのショウ・ジ・チュウ(Shou Zi Chew)CEOに対し、同社が「中国共産党の影響下にあるか」など繰り返し質問した。
コットン氏は、TikTokの親会社バイトダンスと中国共産党との関係や、中国共産党の投資ファンドがバイトダンスの株式を所有している件、トランプ氏が制裁を課した中国共産党の軍事会社Xiaomiで、チュウ氏が過去にCFOとして在籍していたことを言及。
その上で、「中国人の市民権を申請したことは?」「どこの国のパスポートを持っている?」「妻と子供は米国人だ。あなたは米国の市民権を申請したことはあるか?」「あなたは中国共産党員であったことはあるか?」と矢継ぎ早に尋ねた。
「私はシンガポール人です」と返答したチュウ氏に、コットン氏は「中国共産党に関与、または提携したことはあるか?」と問いかけた。チュウ氏もやや苛立ちの表情を浮かべながら、シンガポールで兵役に就いた経歴や、同国に居住していることを強調した。
コットン氏はさらに、チュウ氏が過去に天安門事件を「大規模な抗議活動」と話したことがあると指摘。天安門広場で何が起きたか尋ねられたチュウ氏は、「すでに文書化されているかと思います。虐殺がありました」と短く回答した。
また、ウイグル族への扱いをジェノサイドと思うか?中国の習近平国家主席は独裁者か?といった質問には、「私は、主に自社のことについて語ります」と述べるなど、回答を避けた。
人種差別と非難
このやりとりにネットでは、差別的だと非難する声が上がった。ジャーナリストのハイディ・ムーア氏は「われわれの政府がいかに人種差別的であるかが露呈したことに非常に驚いた。質問自体が中国嫌悪だけでなく、トム・コットンにはアジア人の区別がつかないのは明白」とXに投稿。
アジア系アメリカ人の擁護団体AAPI Victory Fundも「恥ずべき、露骨な人種差別主義者で極めて危険」と批判した。
アジア系のテッド・リュー下院議員(カリフォルニア・民主)は、「あなたには同じように見えてもアジアにはさまざまな国がある。私が小学校で学んだ基本的な事実をあなたやスタッフに教えます。いつでもどうぞ」と皮肉った。
コットン氏はこれらの非難に対し、Foxニュースのインタビューで「彼はTikTokが、社内に中国共産党委員会を置く企業の影響下にあることを認識している」とバイトダンスの関与を指摘。「シンガポールは残念ながら、中国共産党による影響力が世界で最も大きく、彼はTikTokが米国で何をしているのか回答する義務がある」と続けた。「中国共産党の支配下にあるかどうかを尋ねるのは極めて妥当」と自身の発言を擁護した。
保守系メディアNational Reviewは、NBCや一部のジャーナリストは、コットン氏の質問を「不公平」と訴えることで、「中国政府が承認しない意見を表明することに消極的なテック界の大物にフリーパスを与えた」と非難。TikTokは「綿密な調査を受ける必要がある」とコットン氏に賛同を示した。