テキサス州で開催された音楽祭「アストロワード・フェスティバル」で、パニックが起こり観客8人が死亡、300人以上が負傷した事故で、観客の1人がアーティストや主催者に、損害賠償を求める訴訟を、テキサス州ハリス郡の裁判所に起こした。デイリーメールが報じた。
5日午後9時15分頃、フェスのヘッドライナーを務めた人気ラッパーのトラビス・スコットのパフォーマンスの最中、フロントステージに大勢の観客が詰め寄りパニックとなった。事態を受け、コンサートは10時に中止された。
シルヴェスター・ターナー市長の発表によると、死亡した観客の年齢は10代の2人を含む14歳から27歳。ヒューストン消防局は、25人が病院に搬送され、このうち11人に心配蘇生が施されたと発表している。さらに、会場の野外病院で300人以上が手当を受けた。
原告は、会場で重傷を負ったというクリスチャン・パレデスさん(23)。被告は、トラビス・スコットと、ゲストで参加したドレイク、プロモーターのライブ・ネーション・エンターテイメント、会場を運営するハリス・カウンティ・スポーツ・アンド・コンベンション・コーポレーションとされている。
パレデスさんは訴状で、事故当時、一般入場セクションの前部にいたとしており、トラビス・スコットのパフォーマンスのはじまりを告げるカウントダウンが終わった直後に、押されるのを感じたと説明。カオスとなった観衆が殺到し始め、8人が死亡し、自分を含む数十人が重傷を負ったと述べた。
この時「多くの人々が、ライブネーションが雇った警備員に助けを求めたが、無視された」という。
パレデスさんは、トラビス・スコットは以前のコンサートでも騒動を起こしており、原告らはこれを知る立場にあったと指摘。ドレイクについて、トラビス・スコットが群衆を扇動するのを助け、観衆がコントロール不能となっても、2人でパフォーマンスを続けたと非難した。
観客の怪我や死は、被告や関係者の「過失、不注意、無謀」によるものだと主張。100万ドルを超える損害賠償を求めた。
アストロワード・フェスティバルは2018年にトラビス・スコットが自ら始めた企画で、パレデスさんは、同氏はコンサートを管理、プロデュース、監督、組織、コントロールする立場にあったとしている。
ツイッターに出回っている動画では、ファンがコンサートの中断を求めたり、「ショーを止めろ」と合唱する様子が撮影されている。
ICUのナースで、聴衆の1人として参加したマデリン・エスキンスさんは、ローリングストーン誌に「ファンが、近くにいるステージクルーに向かって、コンサートを中止しろ、人が死んでいると叫んでも、誰も耳を貸さなかった」と状況を語っている。エスキンスさんはまた、自身のインスタグラムで、イベントの医療スタッフの準備と経験が不足しており、「スタッフの一部の、CPRの経験がまったくなく、脈拍、頸動脈または大腿動脈の測り方さえ知らなかった」と述べている。
パレデスさんの代理人、トーマス・ヘンリー氏はデイリー・メールに「パフォーマーとオーガナイザー、会場側が、群衆の騒動に気がついていただけでなく、怪我人や死者が出る可能性を示すあらゆる兆候があった」と指摘した上で、「しかしながら、彼らは参加者よりも利益を優先し、死のショーの続行を許可したのだ」と非難した。
これとは別に、ニューヨークポスト紙は同日、もう1人の怪我を負った観客が、トラビス・スコットとイベントのオーガナイザーに重大な過失があったとして、少なくとも100万ドルの損害賠償を求める訴訟を提起したと報じた。
訴えたを起こしたのはマヌエル・ソウザさん。ハリス郡の裁判所に提出した訴状で、「被告は、コンサートを適切に計画、安全な方法で運営しなかった」と主張。「代わりに、観客に危害がおよぶ極度の危険を無視して、危険な行為を積極的に奨励し、あおった」と指摘し、「コンサートを続行するという被告らの判断によって、現場は完全な混乱へと陥り、不必要な8人の死と大勢の怪我を招いた」と述べた。