トランプ氏の勝利支えたメディア戦略とは

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トランプ政権の元上級顧問スティーブン・ミラー氏は、トランプ氏の選挙戦の戦略について、有権者に「共感」を抱かせることだと語った。

トランプ氏は今回、選挙集会や記者会見、Foxニュースなどケーブルテレビのインタビューなどに加え、アントレプレナーや金融家、コンピューター科学者、コメディアン、ユーチューバーなど政治分野以外のポッドキャスト番組に多数出演してきた。選挙戦終盤には、YouTubeで1,800万人以上のサブスクライバーを誇るポッドキャスター、ジョー・ローガン氏との3時間におよぶ対談を行った。

2016年から選挙戦に関わってきたミラー氏は、選挙10日前に公開されたPoliticoのインタビューで、メディアの分散化で、人々は関心のあるトピックにより没頭できるようになり、ポッドキャスト番組からもニュースを得ている有権者が多数存在すると説明。これらの番組に出演することで、「楽しい人で、共感性があり、普通の人で、そのような会話を交わすことができると示すことができた」と効果を語っている。

「共感できる要素を伝えることができれば、有権者は、あなたが推進する政策は、われわれを助けたいと思っているからだと一層強く感じるだろう。メッセージを補完するための、もう一つの方法」と語っている。

トーク内容は、基本的にトランプ氏に委ねられていたという。

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「大統領にはいつも自分自身のスタイルがある。誰かが助言しても構わないが、彼には自身のブランドがある。彼は自身がすべきことをわかっている」「人々が本当に惹かれるのは、トランプ大統領が人間的な側面、彼の人生経験や兄、兄の依存症の問題などについて話すときだ」と述べ、トランプ氏がゴルフカートを運転しながら、プロゴルファーのブライソン・デシャンボーと対談したのは「ゴールド」と称賛した。

出演番組の選定には、息子のバロン君(18)が深く関与したと明かし、「彼には脱帽する。彼のすすめる番組はどれも、絶対的に視聴率はゴールドとなり、ネットを席巻した」と貢献を称えた。

男性の有権者へのアプローチは、中絶問題が選挙戦の争点になっていたためかと問われると、ミラー氏は否定。日々政治や伝統的なメディアのニュースを追っていない無党派層の男性有権者は、「最も重要な流動性のある投票者集団の1つ」だと述べ、「われわれが狙っている層の多くが、彼らだったという認識」と説明を加えた。

また、2020年大統領選との大きな戦略の違いについて「台本のない自由な小売店の訪問」を挙げた。

トランプ氏はサウスカロライナ州のバーガー店やマンハッタンの建設現場、ハーレムの小売店、ブロンクスの床屋、マクドナルドのドライブスルーを訪れ、異例の選挙キャンペーンを実施した。ミラー氏は、現職での選挙戦は、シークレットサービスによる厳重な警護とパンデミックの影響で「柔軟性に欠けていた」と振り返った。

「集会だけでなく、台本なしの瞬間という2016年のルーツに立ち戻りたいと考えていた。トランプはクリックを生み出すため、メディアは彼にフォーカスする。われわれは”トランプ一色”にしたかった」

ハリス氏のメディア戦略は「逆効果」

カマラ・ハリス氏の戦略について、9月末に国境を訪問したことは「大きな戦略的過ちだった。国境を破壊したのは彼女だったということを思い出させた」と主張。選挙戦終盤の大量のメディア露出に関しても「実に逆効果」との見方を示した。

ハリス氏は10月中旬、ABCのトーク番組The Viewに出演し、司会者からバイデン政権との違いについて尋ねた際、一瞬間を置き「思い浮かぶものは何もない」と回答した。この発言に関して、ミラー氏は、「(共同司会の)サニー・ホスティンがカマラ・ハリス候補者を葬り去るなんて誰が想像しただろうか?だが実際にサニーはそうした」と選挙戦のターニングポイントになったと指摘した。

ニューヨークタイムズは、トランプ陣営はこの発言に大喜びしたと伝えている。番組放送直後、最大1,000万人の有権者に対しテキストメッセージで送信。テレビ広告でもこの発言を数週間放送し続けた。

ミラー氏はリズ・チェイニー氏を陣営に取り込んだのも過ちと述べた。彼女は「イラク戦争の立案者の娘」と述べつつ、「共和党員も民主党員も、誰も彼女を好きではない。チェイニーという名は放射能だ」と皮肉った。

「トランプが経済を立て直し、国境を守り、あなたの生活をより良くするといのは、明確かつ説得力のあるクロージング・メッセージ」とする一方、ハリス氏が「イラク戦争の立案者の娘をアピールするのは、良いクロージング・メッセージとはいえない」と述べた。

トランプ氏の元側近ジョン・ケリー氏がニューヨークタイムズのポッドキャスト番組で「ヒトラーを称賛していた」と発言したことは、「完全なでたらめ」「あいつはルーザー」と一蹴。国民の議論が最終的に「大統領職への適格性」へと向かう可能性について、「完全にない」と主張。「民主党がこの道を選択してくれて喜んでいる」との考えを示した。

なお、ABCニュースが選挙後実施した予備的出口調査によると、72%の有権者が国の方向性に不満、怒りを感じていると回答。熱狂や満足(26%)を大きく上回った。5つの問題のうち、35%の有権者が「民主主義の状態」が最も重要な問題と答えた。続いて経済が31%、中絶が14%、移民が11%、外交政策が4%だった。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。