トランプ氏がハリス氏とABC討論会やりたくないワケ

97

トランプ前大統領は3日、Truth Socialのアカウントを更新し、9月4日にハリス副大統領とのTV討論会を行うことでFOXニュースと合意したと発表した。

当初バイデン氏との間で行われる予定だった9月10日のABCニュース主催の討論会は中止されたと主張。候補者がハリス氏に変わったことに加え、ABCと司会のジョージ・ステファノプロス氏と係争中で、「利益相反が生じている」とした。

これに対して、ハリス陣営は、「ドナルド・トランプは怯えて逃げ回っている」と非難。「FOXニュースに救いを求めてとんずらしている」と揶揄し、約束通りに10日に会場に姿を現すべきだと要求した。

トランプ氏は3月、ステファノプロス氏が番組内で、ニューヨークの判事と陪審がトランプ氏にレイプの責任を認めたと繰り返し発言し、名誉を傷つけられたと主張。同氏とABCを相手にフロリダ州の連邦地方裁判所に訴訟を提起した。

問題とされたのは作家E・ジーン・キャロル氏との間で争われた民事裁判で、陪審は昨年8月、トランプ氏は性的虐待と名誉毀損に責任があるとしたが、レイプについては認めなかった。ただし判事は判決文で、ニューヨーク州の法律における「レイプ」の定義が狭く、原告は一般的な意味におけるレイプを証明できなかったわけではないとしていた。

Advertisement

もう一つの利益相反?

訴訟相手のABCに公平な討論会が期待できないとするトランプ氏だが、デイリーコーラーの元ホワイトハウス担当記者でスペクテーターの編集者、アンバー・デューク氏は、トランプ氏にはABCを拒否するもう一つの正当な事由があると指摘している。

デューク氏によると、ハリス氏はABCの親会社ウォルト・ディズニー・カンパニーの主要部門の一つ、ディズニー・エンターテイメントの共同会長、ダナ・ウォルデン氏と1994年以来の親しい間柄にある。

同社のウェブサイトでは、ウォルデン氏は「ディズニーのエンターテイメントメディアとニュース、世界コンテンツビジネスにおけるすべてのポートフォリオを監督」しており、「ABCエンターテイメント、ABCニュース、ABC所有のテレビネットワーク~」を主導する役割にある。一部では、ボブ・アイガー最高経営責任者の後継候補と目されていると報じられている。

ハリス氏の政治活動の支援者でもあり、2003年にハリス氏がサンフランシスコ地区検事に出馬した際、夫妻で資金調達イベントを主催し、勝利を助けた。2010年のカリフォルニア州司法長官選でも、ハリウッドの友人らが資金調達を後押ししたとされる。2022年にカリフォルニア州ブレトンウッドの自宅で、ハリス氏とともに資金調達イベントを主催したという。

家族ぐるみの付き合いで、ハリス氏と夫のエムホフ氏は、首都ワシントンを離れている間は主にブレトンウッドを拠点に生活しているほか、副大統領になる前には、同地域にある行きつけのレストランで「ウォルデン氏とハリス氏、夫たちの姿」が見られたと報じられている。そもそもハリス氏はエムホフ氏との結婚をウォルデン氏ら友人のおかげと認めているという。

なお、Wrapが関係者の話として報じたところによると、テレビ部門でABCニュースを運営する立場にあることから、最近は資金集めイベントを中止しているという。

デューク氏は、金銭的な「利益相反」はなくなっても、編集上の利益相反の可能性は残ると指摘。ABCニュースによるハリス氏とトランプ氏の討論会には倫理的問題があると主張している。