新型コロナウイルスの検査で再び陽性判定を受けたバイデン大統領に、トランプ氏がメッセージを発表した。回復を願う言葉を並べつつ、根拠不明の陰謀論を交えた発言を連発。ネットではこれが元大統領の言葉かと、呆れる声が上がっている。
バイデン氏は、先月21日に新型コロナ検査で陽性判定を受けた後、抗ウイルス薬「パクスロビド」を服用し、27日の検査では二日連続で陰性が示された。このことからホワイトハウスで業務を再開したが、土曜日の検査で再び陽性となった。同薬に関する研究では、ごく少数の患者に再び陽性となる(リバウンド)例が見られるのだという。
31日、自身のSNS「Truth Social」のアカウントを更新したトランプ氏は、「ジョー・バイデンの2回目のコロナ発症、それは時々チャイナウイルスと呼ばれるものだが、悲しいことに、彼の医者による誤診だ」と根拠なく主張。「そのかわりに彼は認知症だが、幸いにも回復している」と投稿した。続けて「ジョーは、一時的に美しいウィスコンシン州のナーシングホームに移ろうとしている」と介護施設に入ると述べた上で、これらのナーシングホームでは「ほぼ100%の入居者が、奇跡的かつ史上初めて、元気に投票したのだ。例えこれらの票が違法であったとしても」と投票不正説を唱え、最後に「早期回復を願っている、ジョー!」と見舞いの言葉を送った。
トランプ氏は長らく、バイデン氏には認知症の疑いがあると主張しており、検査を受けるべきだと繰り返し発言している。一方、自分は大統領時代、認知機能の評価テストで満点を取ったと散々自慢を繰り広げている。ただし、トランプ氏の言うところの検査は通常、認知症や認知機能の低下が疑われる場合に実施されるもので、トランプ氏が受けたのは不可解だとの指摘がある。また、政権で高官を務めたスティーブ・バノン氏は以前、トランプ氏が認知症の初期段階にあるとの考えを示したとされるなど、トランプ氏自身にも認知症の疑いがある。
ウィスコンシン州のナーシングホームについて、トランプ氏の主張のもとは、今年3月に元州最高裁判事、マイケル・ゲイブルマン氏が公開した大統領選のプロセスに関する調査報告書。FactCheck.orgによると、州議会下院の要請で調査をしたゲイブルマン氏は「州選挙委員会が市職員らに、ナーシングホームの規定を破るよう違法に指示を与えたことで、多くの施設で投票率が100%となり、これには投票資格のない人々も多く含まれている」と報告した。
同州の法律では、市職員によって派遣された共和党と民主党の「特別投票代理人」が2名で、ナーシングホームを訪れ、対面で不在者投票の監督・支援をするとされている。ただし、2020年の投票期間中、パンデミックによりホームへのアクセスが禁止されたため、選挙委員会は特別投票代理人の派遣を止め、代わりに入居者の要望に応じて、不在者投票用紙をホームに送り、返送するよう定めた。この規定変更は、州選挙委員会は6人(民主党3人、共和党3人)によって5-1で承認されている。
報告書の正確性については、複数の地元メディアや選挙関係者によって否定されている。ミルウォーキーの選挙事務官は、同郡のナーシングホームの投票率が100%だったというゲーブルマン氏の主張は誤りと指摘。域内32施設の投票率は36%から97%だっとしている。