トランプ大統領は11日、特定のケースにおいて、反ユダヤ主義に基づく差別を、公民権法第六編の違反とする大統領令に署名した。
署名に先立ち、トランプ大統領は「深い悲しみに暮れるニュージャージー州のご家族にお悔やみ申し上げる」と前日、ジャージーシティで起きた銃撃事件に言及。「2人の邪悪な殺人者がコーシャのスーパーで発砲し、罪のない4人の命を奪った。」と述べ、「声を一つにして、反ユダヤ主義の恐るべき悪がいついかなる場所で現れようと、粉砕することを誓い、そのために全力をつくす」と語った。
公民権法第六編(タイトルVI)では、連邦政府の補助金を受ける大学などの機関に対し、人種、皮膚の色、出身国に基づく差別を禁じている。宗教は保護対象となっていないが、大統領令では、「タイトルVIで禁止されるすべての形態の差別と同様に、反ユダヤ主義に根ざした禁止された差別形態に対してタイトルVIを執行することを行政機関の方針とする」と記載。法執行については、国際ホロコースト追悼同盟が採用する反ユダヤ主義の定義を考慮するとしている。
トランプ大統領は「これは大学に対するわれわれのメッセージだ」と述べ、「毎年受け取っている連邦政府の莫大な金を受けたいのならば、あなた方は反ユダヤ主義を拒否しなければならない」と語った。
署名には、ハーバードロースクール名誉教授のアラン・ダーショウィッツ氏やニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーのロバート・クラフト氏など、著名なユダヤ系アメリカ人が参加した。
米国最大のユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)は声明で、大統領令を歓迎すると表明。「アメリカの大学キャンパスで高まる反ユダヤ主義の懸念を認識する上で重要なステップ」と述べた。
イスラエルのカッツ外相は「反ユダヤ主義と大学キャンパスにおけるBDS運動”(ボイコット、投資撤収、制裁運動) に対する戦いにおいて、重大な一歩」と歓迎した。
一方、リチャード・ブルーメンソール上院議員(民主党)はCNNの番組で「ユダヤ人として、ユダヤ教を国籍とラベルづけすることに大変慎重だ」と述べ、「ソ連で起きたことだけでなく、1935年に私の父が逃れたナチスドイツの出来事を感じさせる」と懐疑的な考えを示した。「私はアメリカ人だ。宗教はユダヤ教で、アメリカ合衆国に忠誠を誓っている。差別と戦うには、他の道具があると考えている」と語った。
ユダヤ人ロビー団体、Jストリートのジェレミー・ベンアミ代表は声明で、反ユダヤ主義と戦うよりも、「言論の自由を萎縮させ、キャンパスのイスラエル批判を取り締まる」ようデザインされたものと述べた。「反ユダヤ主義の主な推進者が、外国嫌悪の、白人国家主義の極右である時代に、多岐にわたる非暴力的なキャンパスのイスラエル批判を反ユダヤ主義と宣言するのは見当違いで、有害」と否定的な見解を示した。