ワクチンに否定的なトランプサポーターに接種を促すのは、トランプ氏本人でさえ容易ではないようだ。
先日開催されたアラバマ州の集会で、トランプ氏がワクチン接種を推奨したところ、聴衆の反発に遭い、慌ててトーンを弱める場面が話題になった。
トランプ氏が「君たちの自由を完全に信じている。君たちがやらなければならないことをするべきだ。.でもワクチンを接種することをお勧めする。私もやった。これはいいぞ」と話すと、会場にブーイングの声が湧いた。
これにトランプ氏は「それでもいいんだ。大丈夫」と反応。「でも、私はワクチンをたまたま接種した。これが機能しない場合は、君たちが最初に知ることになる」と冗談めかしつつ「でも機能している。君たちには自由がある。これは維持しなければならない」と語った。
会場の外でCNNのインタビューに答えた女性は、接種しない理由を「政府を信頼していない。疾病対策センターを信頼していない。どれも信用できない」と回答。別の男性は、家にヒドロキシクロロキンが大量にあるから問題ないと答えた。
ヒドロキシクロロキンは抗マラリア薬で、トランプ氏は昨年、ゲームチェンジャーになりうると期待を示し、自ら服用しているとも語った。ただし、米国立衛生研究所(NIH)では、同薬の使用を推奨しないとしているほか、世界保健機関のガイドライン策定グループは、新型コロナの予防に使用しないよう「強く推奨する」としており、感染者に対しても有意義な効果はないとの見解を示している。
先の女性はまた、政府を信頼しない理由に、整骨医のシェリ・テンペニー氏の話を聞いたからだとも答えた。
テンペニー氏は著名な反ワクチン活動家。今年6月、オハイオ州の州議会で、ワクチン接種者は磁気を帯びているなどと陰謀論めいた話を切り出し、話題となった。デジタルヘイト対策センター(CCDH)は3月、ソーシャルメディアで拡散されている反ワクチンコンテンツの3分の2は、テンペニー氏を含む影響力のある12人に起因すると報告している。
女性は、自分にワクチンを接種するよう求めるかかりつけ医に、テンペニー氏の動画を見るよう勧めているのだという。
トランプ氏がワクチンを接種済みであるという事実も受け入れていない。
「彼らはそう言っているけど、十分な確信が持てない。彼はやってないと思うわ」と語った。さらに「神の声に耳を傾けたいと思っていて、神がしようとすることにしか関心がない」と述べ、「神が羊とヤギを分けているときだと思う」と、聖書のたとえ話らしき内容を口にした。
なお、YouGovが6月末に行なった調査では、ワクチンを接種する計画がないと答えた成人の46%がトランプ氏の接種を信じない、または定かではないと答えている。
アラバマ州のワクチン接種率は約36%で、全米で最下位。州保健当局によると、4月から8月にコロナ感染者の約90%、死者の94%がワクチンを接種していなかった。
全国では、CDCのロシェル・ワレンスキー長官が先月、過去半年間の死亡者に占めるワクチン未接種者の割合が、99.5%にのぼると見通しを示した。ワクチン否定派は共和党有権者が民主党に比べて圧倒的に多く、両者のギャップが拡大している。接種率向上にトランプ氏や共和党リーダーの働きかけを求める声が高まっているが、これら反対派への説得は、一筋縄ではいかなさそうだ。