英テレグラフは15日、ウクライナ北東部の都市ハルキウ郊外で、ロシア軍との戦闘に参加していた米国の義勇兵2人が拘束されたと報じた。
捕虜にとられたとみられているのはアレクサンダー・ドルークさん(39)とアンディ・フインさん(29)。二人とも退役軍人。今回の戦争で米国人戦闘員がロシアの捕虜になるのは2人が初めてだと伝えている。
2人とともに戦闘に参加していた米国人とみられる人物が匿名で明かしたものだといい、先週木曜日にハルキウの北東30マイルの地点にある村Izbytskeで、自部隊よりもはるかに大きいロシア軍部隊と戦闘した際に、捉えられたという。
この人物は「ロシア軍がすでに攻撃をしていることが判明した時に、街は安全だと聞かされていた」と情報が錯綜していた問題を指摘。ロシア軍部隊の規模について「T72戦車2台と複数のBMP-3歩兵戦闘車、歩兵100人」と語った。戦闘の中「二人のアメリカ人が、戦闘の闇に消えて行き、そこでロシアの歩兵たちに捕まったと思われる」と話した。
その後、ドローンを飛ばし、ウクライナ捜索チームも地上を探したが何も見つからなかったといい、「戦車の砲弾にやられていれば、遺体や装備品がみつかるはずだ」と語った。
この夜、ロシア関連のテレグラムチャンネルに、二人の米国人がハルキウ近くで捕虜になったという情報が流れたという。「われわれは、この地区で戦っている唯一のアメリカ人だった」と述べ、捕虜は二人以外にはないとの考えを示した。
ドルークさんは、アラバマ州出身で、9.11同時多発テロ事件後に米陸軍に入隊し、二等軍曹としてイラク戦争に出征した。母ロイスさんによると、バクダッドを通過するVIPの護衛隊の射撃手をつとめ、退役後はPTSDに苦しんでいたという。4月にウクライナに向かう際、ウクライナ軍のトレーニングに関わるためだと説明していたという。
捕虜にとられたとみられる前日、先週水曜日に送ったテキストメッセージでは、「1日か2日、音信不通になる」と母親に伝えていた。
フインさんもアラバマ州で暮らしていた。海兵隊で4年間任務をこなしたが、戦闘経験はなかったという。
米国務省は同紙の取材に「米国市民がウクライナで捉えられたという未確認の情報を認識している」と答え、「状況を注視しており、ウクライナ当局と連絡をしている」と述べたという。
ウクライナ戦争に参加した義勇兵がロシア軍に拘束された場合の危険性は、専門家らによってたびたび指摘されている。
倫理・法の支配センターのクレア・フィンケルスタイン氏は軍事専門サイトMilitary.comに、二人がウクライナ軍からの命令を受け、軍服を着用し、ウクライナの武器を使用していたと仮定すれば、「ジュネーブ条約に定められた捕虜としての完全な待遇を受ける資格がある」とする一方で、「これまでのロシアの声明からすると、外国人に捕虜の待遇を認めず、人権や戦時国際法を尊重する可能性は低い」と述べた。
ロシア側は義勇兵らを戦闘員ではなく傭兵とみなす姿勢を明確にしており、ロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は3月、タス通信の取材に「西側がキーウの国家主義体制のために戦うためにウクライナに送っている傭兵は、国際人道法に照らして戦闘員とみなしたり、捕虜の立場を享受することはできない」と話していた。
先週、ロシアが支援するドネツク人民共和国で、捕虜となった英国人義勇兵3人に死刑判決を言い渡されたと報じられている。