米ABCニュースは8日、ウクライナの議会トップが米連邦議会議員に宛てた書簡で、ロシア軍によるイラン製のドローンを使用した攻撃に対抗するために、追加で新たな防空システムの提供を求めたと報じた。
ウクライナでは、ドローンやミサイルによる電力施設などを狙った攻撃により大規模な停電が発生している。
ゼレンスキー大統領は4日、ロシアによる攻撃を「エネルギーテロ」と糾弾し、全国で450万人の住民が電気なしの生活を余儀なくされているとした。首都キーウのクリチコ市長によると、市内だけで45万戸が停電している。
米議員らに求めたとされるのは「C-RAM(Counter rocket, artillery, and mortar)」と呼ばれる、レーダーでロケット弾や迫撃砲弾を検知し、迎撃・破壊するシステム。20mm口径弾を一分間に最大4,500発発射することができるという。
C-RAMが最近使用された例では、今年1月、 イラクの首都バグダッドで米大使館に向けて発射されたロケット弾を迎撃した。砲弾は3発放たれたとみられ、このうち2発を撃ち落とした。
ウクライナのステファンチュク最高会議議長は書簡の中で「重要な目標物、特に発電所」の防衛に役立つと考えを記したという。
ロシア軍は、イラン製の自爆型ドローン「Shahed-136」を頻繁に使用しているとみられている。イランは、侵攻開始の数ヶ月前にロシアに提供したことを認めたものの、継続的な提供については否定している。一方、米当局は、イランから8月末に1,000機が引き渡されたとみている。
ステファンチュク議長によると、現在はジェット戦闘機がドローンを追跡し、場合によって撃ち落とすために使用されている。また、ある関係者はABCニュースの取材に「あらゆる種類の兵器」を用いていると述べ、「肩に担いで発射する対戦車砲」を使用するケースもあると語った。キーウ市では、警官らが機関銃で撃ち落とす様子も伝えられている。
ステファンチュク議長はC-RAMに加えて、議員らに対して、バイデン政権に長距離ミサイルの提供を働きかけることにも協力を求めたいう。
ゼレンスキー大統領はロシアの侵攻開始当初から、長距離ミサイル「ATACMS」の提供を要望しているが、米露の直接的な紛争に発展することを恐れているバイデン大統領は「ロシアを攻撃できるロケットシステムをウクライナに送るつもりはない」と話すなど、提供に否定的な姿勢を示している。ロシアも長距離ミサイルの提供は「レッドライン」であり、提供するならば、米国が「紛争当時国」であることを示すものだと牽制している。
このほかの防空システムに関して、ウクライナのレズニコウ国防相は、7日のテレグラムの投稿で、地対空ミサイルシステム「NASAMS」が到着したと明らかにし、「ノルウェー、スペイン、米国に感謝する」と述べた。これに先立ち、米国防総省は、ウクライナにNASAMSを8基提供する準備を進めており、このうちの2基がまもなく到着するとしていた。
NASAMS(Norwegian Advanced Surface-to-Air Missile System)は、航空機やヘリコプター、巡航ミサイル、ドローンに対抗するようデザインされた中距離防空用の高度地対空ミサイルシステム。高価なアセットや人口密集地にも配備され、米国ではホワイトハウスと議会建物を守るために使用されている。米国のほか、フィンランド、オランダ、スペイン、オマーン、チリを含む世界12ヵ国で使用されている。