スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は6日、独立以来最悪の経済危機を乗り切るため、ロシアに対して原油の供給と旅客便の再開を要請したことを明らかにした。ロシアによるウクライナ侵攻によって世界的な物価高が起こる中、スリランカでは数か月にわたり停電や物価高騰、食料・ガソリンの不足が続いている。
ウクライナ侵攻以降、欧米や日本はロシアへの経済制裁を発動、強化し、ロシアとの対立を深めている。G7諸国は6月、途上国向けのインフラ整備に今後5年間で6千億ドル(約81兆円)の投資を実施していく政策を打ち出し、日本、米国、オーストラリア、インドの4か国で構成される協力枠組みクアッドは5月、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、今後5年間で同地域のインフラ整備に500億ドル(約6兆3800億円)以上の支援や投資を目指す方針を発表したが、その背後には中国やロシアに対抗する狙いがある。一方、中国も依然として一帯一路戦略に基づき、アジアやアフリカ、中南米など各国へ莫大な資金援助を行っており、援助による大国間競争は今後さらに拡大するといわれる。
そのような中、冒頭にあげたスリランカのケースは、我々に1つのことを暗示している。それは、米中(欧米vs中露?)による影響力維持・拡大を狙った大国間競争が激しくなればなるほど、中小国は米中どちらにもつかず、天秤外交を活発化させ、双方から援助を引き出すことだ。
今日のスリランカのケースはやむを得ない事情があるが、米中対立をそれほど懸念せず(対岸の火事だと思っている)、対立する大国双方から援助を最大限引き出すため、米中対立を上手く利用しようとする国も少なくない。筆者はよくアフリカの国際政治に関するオンライン会議に参加するが、複数の国からは、「米中対立が激しくなればなるほど我々にはチャンスがある」、「中国に接近することによって米国から譲歩を引き出し、逆に米国に接近することによって中国から譲歩を引き出す戦略は有効だ」などの声も聞かれ、米中の狭間で悪戦苦闘する日本にとっては考えられない発想だ。
しかし、アフリカだけでなく援助を必要とする他の中小国もおそらく同じ姿勢を取ることだろう。それによって利益を上げる国が出てくれば出てくるほど、その動きは活発化するだろう。正に、漁夫の利だ。