ウクライナ軍大佐 海底パイプライン破壊に関与か

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昨年9月に起きたロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」爆破事件で、ウクライナ軍大佐が中心的役割を果たした疑いが浮上した。

ワシントンポスト紙がウクライナや欧州各地の当局者などの話として伝えたところによると、破壊工作の「コーディネーター」を務めたとされるのはウクライナ特殊作戦軍のローマン・チェルビンスキー大佐(48)。爆破作戦で、ロジスティクスを管理し、6人の工作員が偽名でボートを借りて、深海潜水器具を使用して海底パイプラインに爆発物を設置するのを助けたという。

ノルドストリーム1と2の二本のパイプラインの複数箇所でガス漏れが発生したのはロシアによるウクライナ侵攻開始から7ヶ月後の昨年9月26日。当初捜査を行ったスウェーデンの検察当局は同年11月、現場から「爆発物の痕跡」が見つかったとし、「重大な破壊工作」によるものと発表した。

チェルビンスキー氏は計画策定に関わっておらず、命令はより上級の軍当局者から下され、ワレリー・ザルジニー総司令官に報告されていたという。

同紙は今年6月、バイデン政権は事件の3ヶ月前に計画の存在を同盟国から知らされていたと報じていた。情報はヨーロッパの情報機関からCIAに共有されたもので、ウクライナ軍が総司令官に直接報告する少数のダイバーを使って隠密攻撃を計画しているというものだった。ヨーロッパ情報機関の報告は、今年4月に逮捕されたマサチューセッツ州の州兵のメンバー、ジャック・ティシェイラよってネットに流出し、それには工作員の数や攻撃方法など、具体的な詳細を把握していたことが示されていた。同報告ではまた、計画と実行はザルジニー氏に直接報告され、ゼレンスキー大統領に知らされなかった可能性が記されているという。

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同報道を受け、ゼレンスキー大統領は当時、ポリティコ掲載のインタビューで「私がウクライナの大統領であり、適切に命令を下している」とした上で、「そのようなことをウクライナはしていない。私は決してそのように行動しない」と政府の関与を否定していた。

CIAは当時、ザルジニー氏に仲介者を通じて米政府の反対の意向を伝えており、米当局者らは攻撃は中止されたものと信じていたという。

ローマン・チェルビンスキーとは

チェルビンスキー氏はロシアによる侵攻開始後、ウクライナ特殊作戦軍の部隊に所属。ロシア占領下にある地域で「抵抗活動」に従事し、ザルジニー氏とダイレクトにつながるヴィクトル・ハヌシュチャク少将に報告していた。

ウクライナの軍情報機関やウクライナ保安庁(SBU)の上級職を歴任しており、公私にわたって軍事および安全保障の指導者と親しかった。

ポスト紙は、こうした立場から、チェルビンスキー氏はウクライナの責任を曖昧にするための秘密任務の遂行に適していたと指摘している。

パイプライン以外の秘密作戦にも関わっており、2020年には、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの戦闘員をベラルーシに誘い込んで拘束、ウクライナに連行して告発することを目的とした計画を監督したほか、親ロシア派分離勢力の指導者をウクライナで殺害する作戦やドンバス地域東部で2014年に起きたマレーシア航空17便撃墜事件をめぐって、ロシアの役割を裏付けられる証人を拉致する計画や実行にも関わったとことを自ら認めているという。

ただし現在は、ロシア人パイロットをウクライナに亡命させる計画をめぐって今年4月に逮捕、職権乱用の罪で起訴され、キエフの刑務所に拘留されている。捜査当局は同氏が許可なく行動し、作戦によってウクライナ飛行場の座標が漏洩したことで、ロシアのロケット弾の標的となり死傷者を出したとしている。

チェルビンスキー氏は命令に基づく行動で、ロシアの攻撃に責任はないとして無実を主張。さらに逮捕と起訴はゼレンスキー政権批判に対する「政治的報復」だと非難している。

同氏はアンドリー・イェルマーク大統領府長官がロシアのためのスパイ活動をしている疑いがあると公に主張したほか、ゼレンスキー政権がロシアの侵略に対する十分な準備を怠ったと非難するなどしていた。

パイプライン爆破への関与については、ポスト紙と独シュピーゲル誌に対する声明で「ノルドストリーム攻撃への私の関与に関する憶測はすべて、何の根拠もなくロシアのプロパガンダによって広められている」と否定したという。

Mashup Reporter 編集部
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