米中央情報局(CIA)の準軍事部隊(パラミリタリー)では、ウクライナの”カウンターパート”を訓練する秘密のプログラムを実施していたという。ヤフーが元高官らの話を元に伝えた。
秘密作戦がスタートしたのは2014年。ロシアのクリミア併合後、ドンバス戦争が勃発してから間もなくのことだった。作戦には、スナイパーなどの戦術のスペシャリストをはじめ、少数の経験豊富な隊員のみが選ばれた。
先月24日から続くロシアによるウクライナへの侵攻では、予想を上回るウクライナ軍の激しい抵抗により、一部の主要都市でロシア軍の進軍が停滞しているとも伝えられている。ウクライナ軍はロシア軍の司令官3人を殺害したと発表しており、このうちの1人は、スナイパーによるものだとしている。
ヤフーの取材に、CIAの元高官は、秘密作戦が実を結んでいると主張。「スナイパーの大きなインパクトを目の当たりにしている」と話した。別の関係者は「トレーニングが真に報われた」と語った。
CIAパラミリタリーが教えたものには、狙撃技術や米国が提供した対戦車ミサイル「ジャベリン」やその他の機器の操作方法、ロシア軍のデジタル技術を使った追跡を回避する方法、機密連絡ツールの使い方などが含まれるという。
プログラム開始当初、前線で情報技術を使って、ウクライナ兵士の位置を迅速に特定し、標的とするロシア軍の能力に衝撃を受けたという。元CIA高官は、ハイテクな戦闘環境について「ウクライナ東部の端っこが映画ターミネーターのスカイネットのようだった」と説明した。
これに対してCIAは「ロシアから方向を探知される前に、連絡を取り合い、移動する」ことを可能とする新たな通信方法を開発。さらにロシアの諜報能力に対処するため、前線にいるパラミリタリー同士、またはワシントンに安全に情報を送信できるツールも開発しという。この技術の一部は、ウクライナ側にも共有されたという。
最も避けたかったのが、CIAのパラミリタリーがロシアと直接戦闘を交えることだったという。紛争を拡大させる可能性があり、2017年に発足したトランプ政権の国家安全保障会議も懸念を示していた。元高官によると、ホワイトハウスはまた、CIAのスパイが、親ロシア派の武装勢力に囚われた場合に、何が起きるか心配していたという。
プログラムは数年間続いたという。ロシアの侵略の脅威が深刻化した先月、アフガニスタン撤退で手痛い思いをしたバイデン政権は、紛争地帯にいるパラミリタリーを含む、すべてのCIA職員をウクライナから戻したという。