「泥ぼう男爵」時代に逆戻り?バイデン氏が警告する寡頭制の影

3

15日、ホワイトハウスで退任演説を行ったバイデン大統領は、トランプ政権の成功を願い平和な権力委譲を約束する一方、米国でオリガーキー(寡頭制)が形成されつつあると警告した。

「私が懸念している事を国家に警告したい。それはごく少数の超富裕層の手に権力が集中する危険であり、彼らの権力濫用が放置された場合の危険な結果についてである。今日、アメリカにおいて極端な富、権力、影響力を有するオリガーキーが形作られようとしており、われわれの民主主義全体と基本的権利と自由、誰もが成功するための公平な機会を脅かしている」。

ABCニュースによると、次のトランプ政権は、閣僚の承認が順調に進めば近代史上最も裕福な人物で構成されることになる。少なくとも13人のビリオネアが要職に就く見込みで、純資産は合計で4,600億ドルを超える可能性がある。

その中には、トランプ氏をホワイトハウスに送り込むために2億6,000万ドル以上を投じ、自ら政府効率化省を主導することになる世界一の富豪、イーロン・マスク氏、教育長官に指名されたプロレス団体WWEのリンダ・マクマホン元CEO、財務長官の指名を受けたヘッジファンド・マネージャー、スコット・ベッセント氏、ノースダコタ州知事で内務長官候補となったダグ・バーガム氏らが含まれる。

利益相反を懸念する声もある。

Advertisement

ニューヨークタイムズによると、マスク氏の宇宙企業スペースXは、NASAのロケット打ち上げスケジュールを事実上決定するほどの多大な影響力を有している。テスラを含む同氏の企業群は2023年、17の連邦機関と100件近くの契約を結び、30億ドルの契約を約束された。

すでにオリガーキー?

ノースウェスタン大学の政治学教授、ベンジャミン・ページ氏らは、オリガーキーは、アリストテレスの定義に基づき、最も裕福な市民(常に少数)による権力の行使を意味し、必然的に極端な物質的不平等を伴う極端な政治的不平等を広く指すとしている。また、オリガーキーと民主主義は相互に排他的ではなく、シンガポール、コロンビア、ロシア、インドネシアなどの国だけでなく現代の米国にも適用できると指摘している。

ページ氏とマーティン・ギレンズ氏は2014年に発表した論文で、少数の富裕層による政治的影響力の高まりに警鐘を鳴らしている。

2人は、1981年から2002年に世論調査が実施された1,779の政策変更案を取り上げ、それぞれのケースについて回答を所得水準別に分類。どの程度の頻度で政策の好みが反映されたかを判定した。

結果、経済的にエリート層の支持が低い政策変更案が採用される確率は約18%に過ぎないのに対し、支持が高い政策変更案が採用される確率は約45%となっていたことがわかった。

ページ氏らは「経済エリートの好みは、平均的な市民の好みよりもはるかに大きな独立した影響を政策変更に及ぼしている」と説明。「一般市民とエリートの好みが一致する場合もあるが、「市民の大多数が経済エリートや組織化された利益に反対すると、彼らは一般的に負ける」と評価を示した上で、以下のように結論づけた。

「アメリカ人は、定期的な選挙、言論と結社の自由、広範囲にわたる参政権といった民主的統治の中心となる多くの特徴を享受している。しかし、政策決定が強力なビジネス組織や少数の裕福なアメリカ人為によって支配されるならば、民主主義社会であるという米国の主張は、深刻な脅威にさらされると我々は考える」。

今週上院で開かれた財務長官候補の承認の是非を審議する公聴会では、バーニー・サンダース議員(無所属 バーモント)とスコット・ベッセント氏の間で、バイデン氏のオリガーキー発言をめぐって緊迫したやりとりがあった。

サンダース氏は、「下位1億7000万人より3人多い富裕層がいる。所有の集中はかつてないほど進んでいる。メディアの所有の集中化が進み、マスク、ベゾス、ルパート・マードックといった一握りの億万長者がメディアと国民が受け取る情報をますます所有するようになっている」と述べ、「我々の選挙資金制度は腐敗し、少数の億万長者が大統領選挙と議会選挙に巨額の寄付を行っている」と指摘。

「経済、メディア、政治に莫大な権力を持つ少数の億万長者がいるとき、バイデン大統領が昨日述べたことに同意しますか?」と詰め寄ると、ベッセント氏は、「あなたが挙げた3人の億万長者は、全員自分でお金を稼いだ人たちです」と、明確な回答を見送った。サンダース氏はその後も同様の質問を繰り返したものの、イエスorノーの答えを聞き出すことはできなかった。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。