エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党 マサチューセッツ)は22日、ブログを通じて、2008年以来の経済危機に陥いる兆候が高まっているとし、回避するための政策の実施を呼びかけた。
ウォーレン議員によると、製造業の後退や家計と企業両方の負債の増加など、経済基盤が脆弱化しており、一度の衝撃で連鎖的な危機に陥る危険が高まっている。
家庭では、賃金の伸びが停滞する一方で、住宅、育児などに関わる基本支出の上昇を背景に、かつてより多くの債務を抱えている。学生ローンの総額は経済危機以降2倍に上昇しているほか、クレジットカードの負債は2008年のピーク時と同程度となっている。自動車ローンの債務は、観測を始めた過去20年で最高水準に到達。返済の滞った自動車ローンの件数は700万件を超えており、サブプライムローンが破綻する前の特徴と類似しているという。また、成人の30%に相当する7,100万人がすでに債務の延滞を抱えており、金利上昇や所得が低下した場合、家計が簡単に危険に追いやられる可能性が高まっている。
企業に対しては、信用リスクの高いレバレッジド・ローンの貸付け額が、トランプ大統領の就任以降40%以上上昇しており、システミック・リスクが拡大している。これらのハイリスクのローンは米企業に対する貸付の4分の1を占めており、乏しい審査で、商品化され、投資家へ販売された2008年以前のサブプライム住宅ローンと似ていると指摘。規制当局へ警戒を促しているものの、反応は鈍いという。
一方、製造業に関しては、トランプ大統領が復興を掲げているにもかかわらず、製造部門は、第1と第2四半期連続で下降。投資家の予測を下回っているほか、過去初めて、製造業の従業員の時給が全国平均を下回っている。
これらに加え、ウォーレン議員は、トランプ政権の債務上限の引き上げが、経済的混乱をもたらすと指摘。専門家は2008年のリーマン・ブラザーズ崩壊よりも「壊滅的」となるとみているという。さらに、米中貿易戦争による中国の減速がアメリカ経済に波及効果を及ぼすほか、イギリスのEU脱退が「合意なき離脱(ノー・ディール)」となった場合、米経済に重大な影響が起きると危険を語った。
一方でウォーレン議員は、直ちに行動を起こすことで、危機を回避するチャンスがあるとして、負債の減少や賃金上昇などの政策を訴えた。
家計については、最低賃金15ドルや、非白人女性の所得上昇のために、企業の役員の40%に起用することを提案。また、公約として発表している学生ローンの免除、ユニバーサルチャイルドケアや公立大学の無償化のほか、規制当局による、レバレッジドローンの監視の強化、気候変動対策に投資を拡大し、製造業や雇用の拡大をはかる「Green Manufacturing Plan」の有効性を強調した。
加えて、債務上限については、上限引き上げを排除、または議会が承認する歳入と歳出に自動的に対応させるべきだと主張した。
最後に、「警告灯が点滅している。今年か来年のいずれにせよ、景気後退の可能性が高まっている。手遅れになる前に、議会と規制当局は直ちに脅威を封じなければならない。」と素早い対応の必要性を語った。
2012年に上院選に勝利し、マサチューセッツ州初の女性上院議員となったウォーレン議員は、政界に入る前、法学者としてテキサス大学やペンシルバニア大学、ハーバード大学で教鞭をとった。リーマンショックに始まる2008年の金融危機では、不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief. Program、TARP)を監督する議会監視パネルの議長を務めた。その後、消費者金融保護局の設立に向け、オバマ大統領の補佐官および財務長官に対する特別顧問に就任している。現在、2020年大統領選の民主党の有力候補の一人とみられている。