ニューヨークで日本菓子のサブスクリプションビジネスを手がけるBokksuが仕入れた大量のキットカットが、盗難の被害に遭ったという。
日本のレアなフレーバーのお菓子は、近年米国で人気が高まっている。キットカットもその一つで、日本の限定味は数倍の値段で販売されている。
ニューヨークタイムズによると、同社の創業者ダニー・テイン氏は今年の夏、メロンや抹茶ラテ、大福味など11万ドル分(約1,500万円)を仕入れ、25万ドルの売り上げを見込んでいた。
カリフォルニアの港に着いた貨物は、ロサンゼルス郡にあるJapan Crate Acquisitionという企業の運営する施設に一時的に保管した後、大陸を横断してニュージャージー州にある同社の倉庫に到着する予定だった。
テイン氏は、フロリダにある運送仲介会社、 Freight Rate Centralに国内の運搬を1万3,000ドルで依頼した。同社のオーナー、シェーン・ブラック氏が業者用のネット掲示板で募集をかけた結果、HCH Truckingという会社のトリスタンと名乗る人物がロサンゼルスからの運搬を請け負うことになった。
そこまでは順調だったが、予定の日を超えてもキットカットが到着しない。心配したブラック氏がHCHの本社に連絡をすると、トリスタンという人物が在籍していないことが発覚した。これを察したかのようにトリスタンは、ブラック氏に自らメールをよこし「そろそろ白状する時期だ」と切り出し、「私は実は詐欺師で、HCHのオーナーとは何の関係もない」と告白したという。トリスタンは貨物のありかについて、ロサンゼルス東部にある二つの倉庫を告げて、その後連絡を絶った。なおブラック氏はトリスタンにまだ支払いを済ませていなかった。
ブラック氏は、このうちの一つの倉庫会社に、保管延滞料3,830ドルの支払いを約束して貨物を解放。今度は、掲示板を通じてMVK Transport Inc.のマニーという人物に運搬を依頼した。ところがこれも詐欺だった。マニーとは連絡が途絶え、キットカットは南カリフォルニアの広大な高速道路のどこかへと姿を消してしまった。
残りの倉庫でも問題が発生した。貨物のオーナーにはBokksuではなく、関係のないオハイオ州で運送業を営む男性の名が登録されていた。この男性は自分の名が使用されていたことなど知らず、ブラック氏は貨物の解放を求めたものの、オーナーの証明と支払いをしない限り貨物は動かせないと断られたという。地元の警察に被害届を出そうとしたが、司法管轄上の問題で関与できないと告げられたという。
この時点で、Bokksuはすでにブラック氏を解雇して支払いを中断していた。
責任は誰に?
Bokksuは保険の適用が却下されたため、責任をブラック氏に求めた。しかしブラック氏は、HCHのトラックではない人物にやすやすと貨物を預けたJapan Crate Acquisition側に責任があると主張している。
奇妙なことに、Bokksuは今年9月に同社の買収を発表していたが、タイムズの調べで6月の時点で買収を完了させていたことが判明した。つまり、Bokksuは完全子会社を通じて、不正トラック2台に自分のキットカットを積み込ませたことになる。
こうした詐欺は「架空ピックアップ」「戦略的盗難」と呼ばれる犯罪のほんの一例にすぎず、業界専門家によると、今年に入って700%増加しているという。恐喝の一種で、金銭の支払いに応じない場合、人質にとられた貨物が消滅する危険があるという。