トランプ大統領は23日、2016年大統領選で一時的に選挙対策本部長を務めたポール・マナフォート氏や盟友ロジャー・ストーン氏、娘のイバンカ氏の夫、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問の父親であるチャールズ・クシュナー氏など、26人に恩赦を与えた。
1990年代から不動産開発業で成功を収めたチャールズ・クシュナー氏は2005年に脱税と証人買収、違法な政治献金など18件の罪で有罪を認め、2年間の実刑判決を受けた。
捜査を担ったのは、当時連邦検察官で後にニュージャージー州知事となったクリス・クリスティー氏だった。
ワシントンポスト紙によると、チャールズ氏は、民主党に多額の政治献金をするために自分以外の名前を使用。この中には、当時学生だったジャレッド氏も含まれていた。ジャレッド氏がハーバード大学を卒業するまでに、息子の名前で9万ドルを寄付していたという。
チャールズ氏は、2002年から2004年にニュージャージー州知事をつとめたジム・マッグリービー(Jim McGreevey)氏の大口寄付者で、親しい関係にあった。マッグリービー氏はチャールズ氏をニューヨーク・ニュージャージー港湾公社の委員長に指名したが、疑惑が浮上したことから2003年に辞退したという。
チャールズ氏の政治献金は兄弟間の確執に発展。兄のマレー・クシュナー氏は事業資金を献金に流用したとして、チャールズ氏を提訴。当時担当していた会計士も、証拠を提出したところ不当に解雇されたとして訴訟を提起した。
チャールズ氏は、自分を裏切った家族に警告するため、美人局を画策。売春婦に1万ドルを支払って、実の妹エスター氏の夫、ビル・シュルダー氏を誘惑させた上、ホテルに設置したビデオカメラでセックスの様子を盗撮。ビデオと写真をエスター氏に送りつけた。
チャールズ氏は、テープを送りつけるために私立探偵を雇い、妹家族がパーティを開く直前に送るよう指示したという。
しかし、エスター氏がテープをFBIに持ち込み、チャールズ氏の逮捕へとつながったという。
チャールズ氏さらに、会計士を陥れるために、売春婦に支払いをしようとしたが、会計士は女性を断ったという。
クリス・クリスティー氏は昨年、PBSのインタビューで、チャールズ氏の身内に対する報復について、検察官の経験の中で「最も胸糞の悪い犯罪」だったと話している。
2016年大統領選で、自身も共和党予備選に出馬したクリスティー氏は、後にトランプ氏支持に回り、勝利を助けた。クリスティー氏は、一時政権移行チームのトップを任されたが、途中で降板させられた。クリスティー氏が、副大統領候補や、閣僚のポストなどの機会を逃したのは、クシュナー氏の父親の訴追が関係しているとみられている。
父親が有罪判決を受けたことで、クシュナー氏は、検察官になる計画を断念。家族の事業を引き継ぎ、2008年にクシュナー・カンパニーズ(Kushner Companies)の最高経営者に就任した。イバンカ氏とは、2005年にビジネスランチで知り合ったことをきっかけに、デートを始めた。宗教上の懸念から2人の関係は一時破綻したが、イバンカ氏は最終的にユダヤ教徒に改宗。2009年に結婚し、3人の子供をもうけた。
夫婦は今月、ごくわずかな著名人が住むフロリダ州マイアミのプライベートアイランド、インディアンクリーク島(Indian Creek)に土地を購入したと報じられている。
なおチャールズ氏への恩赦に際し、ホワイトハウスは声明で「2006年に刑を終えた後、クシュナー氏は重要な慈善団体や活動に身を捧げてきた」とした上で「この慈善活動の記録は、クシュナー氏の、虚偽の納税申告の準備と、証人への報復、連邦選挙委員会に対する虚偽申告による有罪と2年の実刑を小さくするものだ」と発表している。