9日、バイデン大統領のユタ州訪問を前にオンラインで暴力的な脅迫をした男が、米連邦捜査局の捜査官らによって射殺された。
AP通信によると、殺害されたのはソルトレイクシティから南方80kmにある都市プロボに住むクレイグ・デルー・ロバートソン(Craig Deleeuw Robertson)容疑者。FBIは声明で、発砲が起きたのは午前6時15分、特別捜査官が本人宅で逮捕状を執行する際だったと発表している。ロバートソン容疑者はこの時、武装していたという。
バイデン大統領は午後4時25分にソルトレイクシティ国際空港に隣接するローランド・R・ライト州軍航空隊基地に到着。有害毒物にさらされるなどした退役軍人の医療ケアと給付金の拡大を認めるPACT法の成立一周年を記念し、退役軍人の医療施設を訪れたと伝えられている。
令状の取得にあたって特別捜査官が裁判所に提出した文書によると、ロバートソン容疑者は2日前の7日、SNSで、バイデン氏がユタ入りするのを聞いたとした上で、「俺の古びたギリースーツ(狙撃手が使用する迷彩服)を引っ張り出して、M24スナイパーライフルのほこりを掃除する。愚か者のリーダーよようこそ」と投稿していた。
SNSに過激投稿連発、FBIがマーク
ロバートソン容疑者は、何ヶ月も前から捜査当局者や公職者に対する暴力的な投稿を繰り返していた。
捜査のきっかけとなった3月の投稿では、ポルノ女優への口止め料支払いに関するトランプ氏の捜査を率い、起訴に持ち込んだマンハッタンのアルビン・ブラッグ検事を名指しして「もう1人のジョージ・ソロス、政治ハッカーの地区検事を根絶やしにするという俺の夢を叶えるためにニューヨークに向かっている」と投稿。続けて「スミス&ウェッソンM&P(ピストルの名)を持って裁判所のガレージで待ち伏せして、選ばれるべきではなかった進歩派の愚かな検事を消してやろう」「ブラッグの前に立ちはだかって、俺の9mmで額に一穴開けて、奴の生命の灯火が消えるなか、額から血がしたたって痙攣するのを見たい」などと記していた。
この投稿はプラットフォーム側から捜査当局への報告へとつながった。その後、捜査官は、ロバートソン容疑者の自宅を訪問。投稿に関する話をしたいと伝えると、「夢だと言っただろ。それだけだ。令状なしに二度とくるな」と言って、会話を拒否したという。
これから遡ること半年、2022年の9月には「大統領または2人の暗殺にふさわしい時。ますはジョー、そしてカマラだ」と投稿していたほか、民事でトランプオーガニゼーションの捜査を進めるニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官の名前を挙げて「スナイパーの弾丸は、お前の免責などお構いなしだ。ビッチ」などとコメントしていた。
このほか、メリック・ガーランド司法長官を「認知症の密告者」と罵倒しつつ、「お前のFBIスワットチームを俺の家によこせ。俺はMAGAトランパーだ」と、トランプ支持者であることをアピールしたこともあった。
こうした投稿に混じって、ライフルやピストルの画像を繰り返し披露していた。
弱々しい老人だった?
近所の住人によると、こうした言動に反してロバートソン容疑者は体の弱い老人で、手彫り杖を持って歩いていたという。SNSのプロフィールでは74歳となっていた。日頃から銃を持ち歩いていたが、脅威に見えたことはなかったという。
ある隣人は「車でソルトレークシティまで出かけて、ライフルをセットして大統領を撃つなんてありえない。100%ない」と話しているという。