今月2日、イーロン・マスクCEOの指揮のもと、「ツイッター・ファイルズ」と題された長文スレッドがツイッター上に投稿された。
投稿者はジャーナリストのマット・タイ―ビ氏で、ツイート36件分にも及んだスレッドでは、大統領選を目前に控えた2020年10月、バイデン氏の次男ハンター氏の暴露記事の配布をツイッターが制限したことに関し、幹部間のメールのやりとりなど、社内で何が行われていたのかが明かされた。
ハンター氏の件とは別に、「バイデンチーム」からのツイートの削除要請や、これに応じたことを示す内容も投稿された。タイービ氏は、同社は両党からの要請に応じていたとする一方で、従業員の政治思考が圧倒的に一方に偏っており、「より多くのチャネル」が右派よりも左派に開かれていたと指摘。結果、旧経営体制のツイッターでは、コンテンツモデレーションの決定に偏りが生じていたとした。
ツイッター・ファイルズの中で、“キーパーソン”として繰り返し名前が上がるのが、マスク氏のツイッター買収完了直後にアグラワル前CEOらとともに解雇された、前法務顧問のヴィジャヤ・ガデ氏。タイ―ビ氏は「(ハンター記事の制限に関する)決定は最高幹部らによって下されたものの、ジャック・ドーシーCEO(当時)の耳には届いていなかった。法務、規律、信頼管理のトップだったヴィジャヤ・ガデが鍵としての役割を果たした」と説明した。
ガデ氏は現在48歳。ニューヨーク・ポスト紙によると、ツイッター法務顧問として昨年1700万ドルの報酬を受け取っていた。保守派の間で「検閲チーフ」と呼ばれるなど、コンテンツやアカウントの制限の決定に、強い権限を有していることで知られていた。
昨年1月6日の米議会議事堂襲撃事件の後、トランプ前大統領のアカウントを永久凍結するとした当時の判断も、ガデ氏の意向を強く反映したものだと言われている。
また、最近ラッパーのカニエ・ウェストの大統領選出馬を後押ししたと言われるマイロ・ヤノプルス氏や、ジャーナリストを自称する極右の活動家、チャールズ・“チャック”・ジョンソン氏といった右派の活動家らを次々とアカウント停止したことについても、ガデ氏が主導したとされる。
今年4月にマスク氏が買収に乗り出すと、緊急会議を開き、その中で社の将来を憂いて涙したと報じられた。
これに対し、保守強硬派で知られる共和党のジョシュ・ホーリー上院議員(ミズーリ州選出)は当時、ツイッターで「ハンター・バイデンの記事に検閲をかけた張本人だ。すべてを物語っているだろう」と皮肉った。
ネット上ではガデ氏に批判が集中し、当時のツイッターの海外事業部門トップ、ララ・コーエン氏がマスク氏を「ミソジニー」と攻撃するなど、ガデ氏を中心とした旧体制のツイッターとマスク氏との、対立の構図を明確にしていた。