俳優、ウイル・スミスの最新映画の公開日が、延期される可能性が報じられた。アカデミー賞でのビンタ事件が尾を引いているようだ。
米誌Varietyは6日、スミス主演の映画「Emancipation」について、公開を2023年に延期する計画があると伝えた。同作は、2020年にアップルが1億2,000万ドルの破格で世界配給権を獲得した。具体的な劇場公開日は発表されていなかったが、今秋の映画祭でプレミアを予定していた。アカデミーの問題を受け、アップルがどのような判断を下すか注目されていた。情報筋は同誌に、2022年に公開しないことは、すでに「暗黙の事実」になっていると話したという。
スミスは今年、「ドリームプラン」(King Richard)で初のアカデミー賞主演男優賞を受賞した。「Emancipation」は受賞後第1作目となる予定だった。
映画は、南北戦争中、ルイジアナ州の農園からから北に逃れ、北軍へと加わったピーターという奴隷の実話をもとにした物語。Historyによると、ピーターが北軍で健康診断を受けた際に、壮絶な拷問を受けた背中の傷跡が写真に収められたが、これが奴隷制の残忍さを示す確たる証拠となり、奴隷制廃止の声に拍車をかけることになった。Deadlineによると、写真は世界中を駆け巡り、フランスが南部から綿の購入を拒否することにつながったという逸話もある。
映画は、「イコライザー」シリーズなどで知られるアントワーン・フークアが監督を務めた。
スミスは今年のアカデミー賞授賞式で、プレゼンターを務めたコメディアンのクリス・ロックが自分の妻、ジェイダの坊主頭をからかったことに憤慨し、ロックに平手打ちを食らわせた。ジェイダはかねてから脱毛症に悩まされていると公表している。妻を侮辱されたスミスへの同情の声も一定数あったが、スミスが生放送中にステージ上で暴力をふるったことに非難が集中し、連日大きく報じられた。
スミスは授賞式で、平手打ちをしてから約1時間後に再びステージに上がり、オスカーを受賞している。翌日にはロックと賞の主催者、映画芸術科学アカデミーに対して、インスタグラムで謝罪声明を発表した。のちに自主的にアカデミーからの退会を表明したが、アカデミーはこれとは別に、アカデミー賞を含む同団体関連イベントから向こう10年、スミスを出入り禁止にする処分を決めた。
騒動から数週間が経過し、次のステップに進むためか、スミスはヨガと瞑想に集中するためインドに渡ったと報じられた。
一方、スミス本人はまだロックに対して「個人的な謝罪」をしていないとも伝えられており、ハリウッドの情報筋はPage Sixに「インドでヨガや瞑想体験をするというウィルの”スピリチュアルジャーニー”は、皮肉でありばかげている。何百万人もの聴衆の前で人に暴力をふるったのに、個人的な謝罪を未だにしていないんだから」と批判。「どんなにナマステを唱えても、埋め合わせはできない」と加えた。