多様性や包括性をモットーに掲げる企業が、相次いで保守派の非難の的になっている。
米人気ナンバーワンのフライドチキンチェーン店「チックフィレイ」(Chick-fil-A)が、「ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公正)、インクルージョン(包括性)」(DEI)部門の責任者を雇い入れていたことが判明すると、保守派のファンからは「ウォーク(社会正義や人種差別といった社会問題に意識の高い)なチキンなどいらない」「チックフィレイ、おまえもか?」といった反発や、ボイコットを呼びかける声が上がった。
槍玉に上がったのは、副社長のエリック・マクレイノルズ氏。なおニューヨークポスト紙によると、2007年からチックフィレイ勤めるマクレイノルズ氏が、DEIの責任者に任命されたのは2年前だった。
チックフィレイは、厳格なキリスト教主義かつ保守派寄りのパブリックイメージで知られる。日曜日は、バプテスト派の創業者ダン・キャシー会長や従業員が、礼拝に出かけたり、休息を取ったりするために休業と定めている。キャシー氏は過去、同性婚への反対を表明し、LGBT団体などから強い非難を受けていた。一方、2019年に反LGBTQ団体への寄付を停止する方針を発表するなど、最近はイメージ転換を図っていた。
「GO WOKE、GO BROKE」が合言葉に
保守派の間では近年、「GO WOKE、GO BROKE」(ウォークになれば、破綻する)がSNSで飛び交うなど、合言葉となっている。
保守派の評論家マット・ウォルシュ氏は5月末、自身のツイッターを更新し「目標は、”プライド”を有害なものとすること」と断言。「このゴミを突きつけると、代償を払うことになることを知らしめるべきだ(中略)最初はバドライト、次はターゲット。キャンペーンは順調に進行している。続けていこう」と支持者に呼びかけた。
米で売上ナンバーワンのビールブランドのバドライトは4月、トランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルヴァニー氏をSNSのキャンペーンに起用したことで、非難を浴びた。また大手小売店のターゲットは先月、プライド月間を記念したコレクションを巡って、不買運動に発展している。バドライトは、過去1カ月間の売上が前年に比べ25%減少。ターゲットは、ディスプレイの変更や商品の取り下げなどを余儀なくされた。
AFP通信は一連の騒動について、2024年の大統領選に向けた「文化戦争」だとしている。